スプレーテクニック関連 不具合まとめ

塗装の不具合『垂れ』

1. 垂れとは何か?

垂れとは、塗装面に塗料が均一に広がらず、

重力によって下に流れてしまう現象です。

垂れが発生すると、塗膜に不均一な厚みが生じ、仕上がりが悪くなるだけでなく、

乾燥時間の遅れや表面の凹凸が目立つようになります。

特に縦方向の面や曲面で発生しやすいです。

 

2. 垂れが発生する原因

垂れの主な原因はいくつかありますが、

塗料の厚み、スプレーガンの操作方法、環境条件が関与しています。

これらの要因を適切にコントロールすることで、垂れを防ぐことができます。

 

1.塗料の過剰な塗り重ね

一度に多くの塗料を吹き付けると、重力により塗膜が流れてしまいます。

特に垂直面では、厚く塗布すると垂れやすくなるため、

薄く数回に分けて塗り重ねるのが理想的です。

 

2.塗料の粘度が低すぎる

塗料の粘度が薄すぎると、流動性が高まり、

塗装面で垂れが発生しやすくなります。

粘度が適切でない場合は、希釈剤の量を見直し

塗料が適度な粘度になるように調整する必要があります。

 

スプレーガンの設定と操作ミス

スプレーガンの噴霧圧力が適切でない場合や、

塗装面にガンを近づけすぎると、

一部に塗料が集中して垂れが発生します。

適切な圧力とガンの距離(約20〜25cm)を保ちつつ、

均一に動かすことが垂れの防止に繋がります。

 

フラッシュオフタイムが少ない

各層の乾燥時間(フラッシュオフタイム)が

十分でないまま次の塗装を重ねると、

下地の塗料が完全に硬化していないため、

上から塗布した塗料の重みで垂れが生じることがあります。

層ごとの乾燥時間を十分に確保することが大切です。

 

温度と湿度

塗装する時は、温度と湿度をしっかりと確認することが重要になります。

塗料が最も適正に反応するのは温度が15~25℃、湿度が40~60%の範囲内です。

低温時には垂れやすく、高温時にはザラツキやすい。

また湿度が高くても乾燥が遅くなり、これも垂れの原因になります。

低温時は速乾性、高温時には置換性の希釈剤を使い、

塗ったパネルの状態をよく確認しながら塗ることで、垂れのリスクを減らすことが出来ます。

 

希釈剤の選定

希釈剤の量が多かった場合、過剰に塗料が薄まり、

隠蔽しにくくなるなどの垂れの原因になります。

また、乾燥速度が遅すぎる物を選んでも同様に垂れやすくなります。

メーカー指定の希釈量を守り、

温度・湿度をよく確認して希釈剤を選ぶことが重要です。

 

塗料の温度管理

塗料が冷えたままだと、塗装時に粘りが強くなり、

塗料の流れが不安定になります。

そうなると、塗料がスプレーガンから均一に出にくくなり、

垂れやその他の不具合の原因になることがあります。

塗料の適正温度15~25℃の範囲にすることで、

均一に塗装しやすくなります。

 

スプレーガンのメンテナンス

スプレーガンのニードルに不具合があったり、

エアーや吐出などの調整に不備があった場合、

塗料を思ったように乗せにくくなり、仕上がりに大きく影響します。

少しでもおかしいと思ったら、清掃を行い、それでも直らない場合は

部品の交換や修理に出すことをオススメします。

 

3. 垂れが発生した場合の対処法

垂れが発生した場合、早めに対処することで

仕上がりへの影響を最小限に抑えることができます。

垂れの程度によって、対処方法は異なります。

 

軽度の垂れはサンディングで修正

軽度の垂れであれば、塗料が乾燥した後に

1300~3000番程度のサンドペーパーで垂れた部分を慎重に研磨し、

表面を滑らかに整えます。その後、ポリッシャーで仕上げて、光沢を取り戻します。

 

ベースコートまで垂れが及んだ場合は再塗装が必要

垂れがベースコートにまで及んでいる場合、再塗装が必要です。

垂れた部分を#800〜1000番のサンドペーパーで研磨し、

平滑にしてから再度ベースコートとクリアコートを塗装します。

垂れたパネルだけ塗ると、隣接パネルと色がずれることがあるので

どこまで塗るかは、その都度の判断が必要になります。

 

早期発見で早めの対応

垂れを確認した時、場合によっては

垂れを最小限に抑えることが出来ます。

やり方は限定されますが、パネルを釣って塗っている場合、

台の角度を変えられるなら、寝かすようにすれば、

塗料が流れるのを最小限に抑えることが出来ます。

また、垂れとは逆向きに緩めにエアブローをするのも有効です。

こうして、垂れが流れて範囲が広がるのを少しでも押さえることで

手直しの手間を少し減らすことが出来ます。

 

4. 垂れを防ぐための注意点

垂れを防ぐためには、作業の前にいくつかの対策を取っておくことが必要です。

ここに紹介する以外でも、ご自身の過去の失敗を改善する方法を

考えて実践するのも、とても有効な手段です。

 

薄く重ね塗りする技術を身につける

垂れを防ぐためには、一度に厚く塗るのではなく、

薄い層を何度も重ねることが効果的です。

各層が十分に乾燥する時間を確保しながら、

複数回に分けて塗装することで、仕上がりが滑らかになります。

 

吹き付け角度とガン操作の管理

スプレーガンを適切な角度で吹き付けることが重要です。

ガンを塗装面に対して垂直に近い角度で動かしながら塗布することで、

均一な塗膜が形成され、垂れの発生が抑えられます。

 

作業環境の温度と湿度を確認する

塗装環境は垂れの発生に大きく影響します。

湿度計と温度計を使用して、適切な塗装環境(20〜25℃、湿度50〜60%)

を維持することが垂れを防ぎやすくなります。

 

塗料の適切な粘度を維持

作業環境や塗料の性質に応じて、

塗料の粘度を適切に調整することも垂れ防止に有効です。

粘度が高すぎると塗料が滑らかに広がらず、

逆に低すぎると垂れやすくなるため、

塗料の希釈率を環境に合わせて調整しましょう。

 

静電気の影響に注意する

 

静電気が発生すると、塗料が不規則に吸い寄せられ、

垂れや塗膜の不均一が発生します。

静電気除去装置を使用して、作業環境から静電気を取り除くことで、

塗料の付き方を安定させることができます。

 

5. 垂れがベースコートに及んだ場合の対策

クリヤーが垂れた時、場合によっては

ベースまで引きずられて流れてしまうことがあります。

そうなってしまうと研磨では修復できないので、再塗装になります。

 

塗膜の削りすぎに注意

垂れた部分を削る際、塗膜を削りすぎて下地が露出してしまうと、さらに修正が困難になります。

慎重に研磨を行い、必要以上に塗膜を削らないよう注意しましょう。

フェザーエッジ処理を行う

再塗装を行う際には、<strong>フェザーエッジ処理</strong>を用いて、

再塗装部分と隣接部分の境界が目立たないようにします。

境界線が目立つと、仕上がりにムラが生じるため、フェザーエッジ処理をしっかり行うことが重要です。

 

塗装中の研磨した箇所の確認

綺麗に研磨したように見えても、

ベースを乗せたら研磨した箇所が吸い込まれて沈む、

または僅かな歪みが残っている場合があります。

補修時にサフを乗せず、そのまま研磨して再塗装する場合は

ベースを乗せる際に、垂れた箇所がフラットになっているか、

その他の不具合がないか、などをよく注意しながら塗装してください。

 

再塗装中に注意すること

手直しのパネルは、痩せや色ムラ、縮みなど、

いろんな不具合が起こる可能性があります。

なので、各工程での確認やフラッシュオフタイムを十分取り、

焦らずに慎重に塗り重ねるようにしてください。

 

6. 垂れが発生しやすい塗装環境

環境を整えることで、垂れを防ぐことに繋がることがあります。

他の不具合の防止にも繋がることなので、ぜひやってみてください。

 

ブース内の換気を確認する

ブース内の吸気・排気のバランスが悪い場合、

湿気や塗料の蒸発が遅れ、塗料の乾燥が遅くなることがあります。

その他にも、ミストが室内に籠もり

ザラつきや色むらの原因に繋がることもあります。

塗装ブースの換気を適切に行い、空気の流れを確保することが重要です。

 

静電気防止策を講じる

塗装時に静電気が発生すると、塗料が予期せぬ方向に引き寄せられ、

垂れや塗膜の不均一が生じることがあります。

静電気防止装置を使用して、静電気の影響を排除することが大切です。

 

塗装ブース内の清掃を徹底する

ブース内に埃やゴミがたまっていると、塗装面に付着し、塗料が不均一に広がります。

普段から掃除するなど、塗装ブースを常に清潔に保ち、

ゴミや異物が混入しないよう管理しておくことも重要です。

 

 

 

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