「技術は見て盗む」
この言葉は、昔から職人の世界で
大切にされてきた考え方です。
僕ら世代はだいたいこうやって仕事を覚えてきた人が多い。
現場で先輩たちの動きを見て、
実際の手元の動きや、仕上がりの細かな違いを観察し、
失敗して改善してを繰り返し、
自分のものにしていく。
教えられるのを待つんやなくて、
自分から学びに行く姿勢って
いうんですかね。
思い返してみると、これには、
『自主性と主体性』
という
2つの重要な要素があったように思います。
自主性と主体性の違い
まず、「自主性」と「主体性」の
違いについてちょっと解説します。
これは似ているようで、
実際には違うものです。
自主性
自主性は、与えられた仕事に対して
自分から取り組む姿勢を指す。
例えば、上司や先輩が何か作業を
しているときに、
「手伝いますか?」
と自分から声をかけるのが自主性。
言われる前に動ける力、これが自主性です。
主体性
一方、主体性は自分の考えに
基づいて動く力です。
例えば、
「どうすればこの作業がもっと効率よくできるやろう?」
と自分で考え、自分なりの
方法を試してみることが主体性です。
自主性が「自分から動く」ことなら、
主体性は「自分で考えて決断する」
ってことですね。
この二つはどちらも大事ですけど、
特に「技術は見て盗む」という学び方では、
最初は自主性で学び、
そこから主体性で応用していく力が
求められるんですよ。
自分から学びに行くだけじゃなくて、
それをどう自分の技術として
使うかが重要なんですよね。
若者からの意見とそのギャップ
最近の若い世代の意見を見ていると、
「教えてもらってからやります」
という姿勢が強いことに気づく。
これは、昔ながらの「技術は見て盗む」
という考え方とは、
かなり違う部分なんですよ。
若い人たちからは、
「俺等世代は教えてもらってないから教え方がわからんのちゃうんか?」
とか、
「背中を見て覚えろなんてもう古い」
といった意見もありますしね。
確かに、時代の流れとともに
職場の指導方法も変わってきたし、
効率的でわかりやすい教え方が
求められるようになりました。
それは理解できる部分もあるし、
実際に合理的な作業方法を
取り入れることは大切やと思います。
でも、その一方で、
「教えてもらうのが当たり前」
とする考え方が強くなると、
自分で考えて学ぶ力が育ちにくく
なるんちゃうかなと心配にはなりますよね。
『それは教えてもらってません』
『言われたとおりやりました』
『教えてくれた〇〇さんに言ってください』
など意見を見ると、特にそう思います。
「背中を見て覚えろ」の価値と今の時代
「背中を見て覚えろ」というのは、
確かに今の時代には
合わないのかもしれません。
昔はそれが当たり前で、厳しい環境で
学びながら技術を身につけていくことが
良いとされていたし、またそのやり方しか
無かったようにも思います。
失敗して怒られて覚えていく。
冷静に考えてみれば、
仕事を覚えるということだけに
絞って考えると
めちゃくちゃ効率が悪いのかもしれません。
でも、「それは古い」と
一言で片づけてしまうと、
技術の深みや現場でのリアルな経験を
スルーしてしまうことになると
思うんですよね。
例えば、微妙な力加減や作業のリズム、
道具の使い方や段取りなど、
実際に現場で見て学ぶことでしか
得られない感覚的な技術があるし、
そして仕事に対する責任。
鈑金塗装は、お客さんのクルマを預かって
作業するものなので、
最新の注意や、高い技術が求められます。
これを動画やマニュアルで
全て伝えることは難しいし、
当然言葉でも説明しにくい。
やっぱり「見て学ぶ」ことでしか
理解できないことってあるんですよ。
だからこそ、教える側としては、
新しい方法を取り入れながらも、
教わる側も、
「自分で学びにいく姿勢」
を忘れずに大事にしてほしいと思いますね。
教えてもらう側の意見が強すぎることへの違和感
最近の若者の意見には、
「教え方が悪いから自分がうまくいかない」
とか、
「まずは教えろ。話はそれからだ」
という感じで意見が強くなる
傾向があように思います。
もちろん、教える側にも改善の余地はあるし、
わかりやすく教えることは大事です。
でも、その一方で、
受け身の姿勢が強すぎると、
上でも書いたように、
自分で考える力が育たへんのも
事実やと思うんですよ。
自分で考える前に聞く。
自分でやっても怒られるから、
それなら最初からやり方を説明しろ。
その方が効率的やんけ、みたいなね。
仕事って、答えがすぐに
わかることばかりやないし、
教えてもらうだけでは
対応できない場面も多い。
自分で考えて行動する力があれば、
教えられたこと以上に自分なりの
工夫ができたりする。
応用が効くとか柔軟な対応とかですね。
それが、長く続けていく上での本当の力になってくると思います。
最後に
教える方と教わる方の意見を見ていると、
どちらも自分たちの意見に
偏りすぎているように思います。
結局のところ、
教える側も教えてもらう側も、
お互いに理解し合うことが大切で、
教える側は、新しい時代に合った方法を取り入れる必要があるし、
教えてもらう側は
「自分で学ぶ」姿勢が重要になる。
そうやって、お互いの意見を聞きながら
やっていけば、
若い世代と共に成長しながら、
良い仕事の環境を
作っていけるんじゃないですかね。
「技術は見て盗む」という考え方は、
確かに古く感じる部分も
あるかもしれないですが、
でも、自分で学ぶ姿勢とか、
自分で考えて動く力は、
どんな時代でも価値があるもんやと
思います。
失敗して改善して
自分で考えて技術を学ぶ。
効率は悪いかもですが、
効率なんて悪いほうが良い時もあります。
作業に失敗時はつきものなので、
ここを大切にしながら、
次の世代に技術を伝えていけたら
それがベストなんじゃないですかね。